ボッカとロッカ

This is a work of fiction.

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 ロッカはおごそかに、彼女の「とっておきノート」を開く。

 升目の書かれたページを開き、「コキョーの謎」と書かれた枠を蛍光ペンで塗って行く。が、途中で手を止め、塗りつぶすのは半分までにしておいた。それからページをめくって、ボッカを描いた絵を見る。最初に描いた宇宙人のような人物の隣のページに、今は、正しく描いた彼がいる。カメラを持って、しょいこを背負ったボッカ。本当はそのふたつをもつことはないし、笑ったりなんかしないけど、絵の中の男の口元は、にっこりと笑っている。子どもの悪い癖ね、とロッカは首を振る。それからまたページをめくっていく。今までもらった手紙の書き写しや、貼付けたベンチのペンキ。そして真新しいページを出すと、ポケットから、今日もらった写真が二枚。それをテープで貼付ける。本当は部屋に飾りたかったけど、ハルに見つかって面倒なことになりたくなかった。爪で、テープとノートの隙間の空気を押し出していく。一枚は、星で作った幕のようなものが写っていた。もう一枚は、海面のような、油絵のような、一面青色と橙色の写真だ。ノートをとじると、もう一方のポケットから今日もらった手紙を取り出し、ベッドに飛び移る。読み返し、また読み返し、あくびをする。夕食の豆の煮込みを食べ過ぎたのかしら。ロッカは手紙を枕の下に滑り込ませると目を閉じた。彼女の部屋で星はひとつも光らない。今日の銀河は曇りなのです、と、ロッカは思う。遠くで玄関の扉が開き、誰かが出て行く足音が聞こえた気がしたところで、彼女はぐう、と寝息をたてた。